フェーズ2 多様なFX予測モデルの開発
March 17, 2024
フェーズ2: 多様なモデルの開発
こんにちは。フェーズ1では基本的なモデルを構築しましたが、フェーズ2ではそのモデルをさらに発展させ、様々な角度から為替市場を分析する高度なモデルを開発します。
概要図
2.1 異なる評価指標に基づくモデル群の開発
為替市場は複雑で、一つの視点だけでは十分に理解できません。そこで、異なる目標(評価指標)を持つ複数のモデルを開発します。
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方向性精度最大化モデル:
- 目的:為替レートの上昇・下降を正確に予測する
- 手法:ロジスティック回帰やランダムフォレスト分類器を使用
- 評価指標:精度(Accuracy)、F1スコア
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利益最大化モデル:
- 目的:取引での利益を最大限に増やす
- 手法:強化学習(Q学習やPolicy Gradient法)を適用
- 評価指標:累積リターン、シャープレシオ
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ドローダウン最小化モデル:
- 目的:資金の一時的な減少(ドローダウン)を最小限に抑える
- 手法:条件付きバリューアットリスク(CVaR)を最小化する最適化アルゴリズム
- 評価指標:最大ドローダウン、Calmar比率
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情報係数最大化モデル:
- 目的:予測と実際の値の相関関係を最大化する
- 手法:勾配ブースティング(XGBoost, LightGBM)を使用
- 評価指 標:情報係数(IC)、ランク相関係数
これらのモデルを作ることで、為替市場の異なる側面を捉えることができます。
2.2 各モデルの最適化
モデルを作成した後は、それぞれのモデルの性能を最大限に引き出す作業を行います。
2.2.1 ハイパーパラメータチューニング
各モデルのハイパーパラメータを最適化します。以下の手法を使用します:
- グリッドサーチ:パラメータの組み合わせを網羅的に探索
- ランダムサーチ:ランダムにパラメータを選択して探索
- ベイズ最適化:過去の探索結果を考慮して効率的に探索
例えば、ランダムフォレストモデルの場合:
- 木の数(n_estimators)
- 最大深さ(max_depth)
- 最小サンプル分割(min_samples_split) などのパラメータを最適化します。
2.2.2 クロスバリデーション
時系列データの特性を考慮した以下のクロスバリデーション手法を適用します:
- 時間ベースの分割:データを時系列順に分割し、過去のデータで学習、未来のデータでテスト
- スライディングウィンドウ:固定サイズの時間枠を少しずつずらしながら評価
- 拡大ウィンドウ:学習データの量を徐々に増やしながら評価
これにより、モデルの汎化性能を適切に評価し、過学習を防ぎます。
2.3 高度なモデリング技術の適用
基本的なモデルに加えて、以下の高度な技術も適用します:
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アンサンブル学習:
- ランダムフォレスト
- グラディエントブースティング(XGBoost, LightGBM)
- スタッキング
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ディープラーニング :
- LSTM(Long Short-Term Memory)ネットワーク
- 1D CNN(1次元畳み込みニューラルネットワーク)
- Transformer アーキテクチャ
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時系列特化モデル:
- ARIMA(自己回帰和分移動平均)モデル
- Prophet(Facebookが開発した時系列予測ライブラリ)
これらの高度なモデルを適用することで、より複雑なパターンや長期依存性を捉えることができます。
2.4 特徴量エンジニアリングの拡張
モデルの性能向上のため、以下の高度な特徴量を追加します:
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テクニカル指標の組み合わせ:
- 複数の移動平均線のクロス
- RSIとMACDの組み合わせ
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市場センチメント指標:
- ニュース記事のテキスト分析結果
- ソーシャルメディアの感情分析スコア
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マクロ経済指標:
- 金利差
- インフレ率の変化
- 貿易収支データ
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時間関連特徴:
- 曜日、月、四半期などの周期性を捉える特徴
- 主要な経済イベントまでの時間
これらの特徴量を適切に組み合わせることで、モデルの予測力を大幅に向上させることができます。
2.5 モデル評価とベンチマーク
開発した全てのモデルの性能を評価し、比較します。
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バックテスト:
- 過去のデータを使用して、各モデルの性能をシミュレーション
- 取引コストやスリッページを考慮した現実的な評価
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統計的検定:
- モデル間のパフォーマンス差の統計的有意性を検証
- t検定やWilcoxonの符号順位検定などを使用
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ベンチマークとの比較:
- ナイーブな戦略(例:常に買い持ち)
- 単純な技術的指標ベースの戦略
- 市販のFX取引システム
これらの評価を通じて、各モデルの強みと弱みを明確にし、次のフェーズでのアンサンブル(複数のモデルの組み合わせ)の準備を整えます。
次のステップ
フェーズ2で開発した多様なモデルは、それぞれが為替市場の異なる側面を捉えています。次のフェーズ3では、これらのモデルを賢く組み合わせて、さらに強力な予測システムを構築していきます。アンサンブル手法の用いることで、個々のモデルの長所を活かしつつ、短所を補完することができるでしょう。
以上がフェーズ2の詳細な内容です。この段階で、私たちは為替市場を多角的に分析する能力を手に入れました。次のフェーズでは、これらの知見を統合し、より洗練された取引戦略の構築に取り組んでいきます。引き続き、FX自動取引の新たな可能性を探求していきましょう!